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教育財務課

教育の情報化

「第5回教育情報化カンファレンスinおおいた」の実施レポート

概要

 いま、「情報社会」は急速に進展し、将来の変化を予測することが困難な時代となってきている。「IoT」「ビックデータ」「人工知能(AI)」などの活用がさらに進む未来社会の中で、子供たち一人一人が自らの可能性を最大限に発揮し、よりよい社会、豊かな人生を創り出していくにはどのような力が求められ、どのような教育が必要となるのだろうか。
 大分県教育委員会は平成24年度から、「未来に生きる子どもたちに必要な情報活用能力を考える」をテーマに、教育情報化カンファレンスを年に1回開催している。県内外の教職員や教育委員会、企業、保護者など教育関係者が一堂に会し、有識者による講演、先進校の事例発表、県内学校の実践報告等を共有しながら、「大分県の教育情報化はどうあるべきか」を考える場である。今回は平成28年8月18日に大分市のホルトホールで開催し、211名が参加した。

会場全体の様子

内容

基調講演

「これからの情報社会に育つ子供たちのために教員ができる情報教育」
 放送大学 教養学部 教授 辰己 丈夫 

辰己氏講演の様子未来はどうなっているか

アップルコンピュータが予測した未来、アラン・ケイが未来を描いたイラストなどから見ても、私たちは昔考えられた未来にある程度乗っている。未来を予測することは難しいが、予測されている未来はある程度は実現される可能性がある。

■人工知能の発達と課題

人工知能の発達が目覚ましい。今後は、IoT、インターネットにつながるものがますます増えてくる。学校のドアにインターネットへつながるセンサ-など、生徒一人ひとりの出欠が自動で取れる。人工知能を使ってコンピュータが学習するディープラーニングは、目覚ましい性能向上をとげている。例えば、「これはネコだ」ということを記憶させるために様々な画像を登録する。これを繰り返し、最終的に画像を見せて、ネコかどうかを判断する。この典型が「碁」。今年の3月、人工知能の「AlphaGo(アルファ碁)」が人間に4勝1敗で勝った。「AlphaGo(アルファ碁)」は、碁はどういうものだ、というのを記憶しているわけではないが人間に勝っている。
しかし、問題点もある。人工知能でできたチャットボット「Tay」 は、人間がTayに教えた内容から、twitterに問題発言をしてしまった。人工知能に学習させるデータは人間が作っており、これが人工知能を学習させることの難しさである。

歴史に学ぶ

コンピュータの能力が人間の知的能力を上回ってしまう日を「シンギュラリティ」とよび、それが2045年という説もある。新しい技術が登場すると使い方がわからず混乱を招くが試行錯誤するなかで、様々な利用が考えられる。twitterでも最初は、災害時などに利用することは予測されていなかった。いろんな使い方はあとから決まってきた。そのため、事件・事故がおきてからやがて法律がきまる。哲学者 ジェームスムーアがこのことを「指針の空白」と表現しており、この時間は、情報技術教育でカバーする必要がある。こうした時代に生きていく子どもたちに接する私たち大人は、もう少し未来のことを見たほうがいのではないか?


未来のためにできること

MITメディアラボ所長 伊藤穰一の発言「世界の変化のスピードがこれだけ早いと地図はもはや役にたたない。昨日の地図ときょうの地図は違う。必要なのはコンパス。『興味を持つ』と仲間とのコラボレーションから生まれてくる。先生が一方的に教えるのではなく、子供たちの学びをどうサポートするか。大事なのは、何をしたいかというコンパスをしっかりもつこと。」 
学ぶべきは、何を学ぶかではなく、どうやって学ぶか。未来を予測するのは難しいが、未来をどうしたいかは決められる。

コンピュータを理解することとプログラミング教育

プログラミング教育の必要性は18年前から変わっていない。そんなに簡単に解決することではない。プログラミングをすることは、因果関係を自分で作って、自分でなぜこのスイッチを押したら、電気がつくの?その繋がりを理解させること。新しい学習指導要領では、小学校で実施されることが盛り込まれているが、各教科でプログラミングを入れるというのは自分は反対。別に時間を設けたほうがいいと思っている。プログラミングによって「思考力をつける」のではなく、「思考する楽しさを経験する」ということ。高校の教科情報では、必履修科目となったことで、大学入試で出題の検討が始まっている。
「情報オリンピックの取組」は、小学生の子供たちにコンピュータサイエンスを学ぶ楽しさを体験してもらうイベント。小学校3年から6年くらいが中心。高校生がやっていることとそんなに変わらないこともできる。

最後に「教員ができること」

今、自分たちの生活の中で、世の中の仕組みにコンピュータが活用されていることを意識すること。今の子供たちは、10年後、20年後を生きていくことを意識すること。そうした子供たちを教育している立場にいること。勉強が終わることはなく、子どもも大人も「考えること」「学ぶこと」を重視する。

講演資料(PDF:94.5KB)

実践発表

「明日からできる!教科の中での情報教育」 
京都教育大学附属桃山小学校 教諭 木村 明憲

木村氏講演の様子なぜ、情報活用の実践力なのか

「子どもたちに、楽しく、自分で学習を進めていける力を育てていきたい」ということを目標に教師を続けてきた。このようなことを思ったのは、講師時代に5年生を担任し、学級をうまく収めることができなかったことがきっかけだった。こうした力を育てるためには、どのようなことが大切なのかを考えている際に、情報活用の実践力に出会った。

「学習支援カード・情報ハンドブック」とは

情報活用の実践力を育成することにつながる学習活動を、問題解決的な学習のプロセスに合わせて整理した「学習支援カード・情報ハンドブック」を作成した。「わかる」から「できる」へつなげるために活用する。
具体的には次の場面で利用する。
(1)観察・実験・見学する視点を確認するときに使う。
(2)伝え方を評価し合うときに使う。
(3)家庭での自主学習をふりかえるときに使う。
こうしたプロセスのなかでの小さな「わかる」の繰り返しが「できる」につながる。

アクティブ・ラーニングにつながるカードやブックの使い方

児童が主体的に関わり合いながら、問題(課題)解決等の学習を行う「アクティブラーニング」に利用することが重要と考えている。そのためには、「使ってみたいと思えるように出会う」「単元の見通しを具体的にする」「学習の振り返りをする」といった利用のポイントが重要となる。

発表資料(PDF:2.8MB)

県内の実践報告

発表1 「メモを生活に活かそう~視覚障がいと知的障がいを併せ有する子どもへの取り組み~」
大分県立盲学校 教諭 阿倍 智樹

阿倍氏発表の様子 対象生徒Aさんは、高等部3年、重複障がい学級在籍し、視覚障がい・知的障がいをあわせもつ。生徒Aさんの「見えにくさ」と「記憶」をサポートするためにICTを活用する取組みを行った。 
「記憶」をサポートするために、授業の中で気が付いたことやアドバイスをテキストメモで記録した。Evernoteを利用し、写真で撮り、コメントを付け加えることで分かりやすく記録することもできた。マインドマップでは、授業の中で気が付いたことやアドバイスをメモし、ふり返りに役立てた。
 「見えにくさ」をサポートするために、板書やプリントは写真で撮り、見えにくいところを拡大した。見えにくい位置にある時刻表も、カメラをうまく使って見ることができた。体育の授業では、動画で自分の動きを記録し、それを確認することで、「できたことの確認」「課題の発見」につなげることができた。
 こうした活動から、主体的に授業に参加する姿勢が見られ、質問や意見が増えた。これまで経験したことがないことについて、「自信がない」、「わからない」という受け身の姿勢だったが、ICTの活用がきっかけで、受け身から主体的な姿勢に変わり、自信を持つようになった。
 今後、どのような場でもICTの活用が許されるか、また、本人が継続して利用していくことができるか、などの課題はあるが、自分の困りに対し、自分で対応できる力を付け、世界を広げ、社会を生きる力につなげてほしい。

発表資料(PDF:3.1MB)

 

発表2 「小学校1年生で何ができるか。iPadを使った授業実践の紹介」
国東市立安岐小学校 教諭 梶原 八千代

梶原氏発表の様子 ICTスマートデザイナー事業に参加し、1台のタブレットとプロジェクターを貸与された。1年目は、使い始めるまでとても不安だったが、まずは悩むよりやってみようという精神で、ICTの有効な使い方を探したいと考えた。視覚的な支援では、ワークシートを写真に撮って黒板に写すことからはじめた。国語の授業で、写真からイメージを膨らますことにも利用した。現在は、問題を写真で映像化し、ノート指導は、写真に撮ったり、実物投影機などで拡大したりして見せる。そして子どもの考えは、ノートを写真で撮って映し出す。こうした取組みにより、時間短縮とユニバーサルデザインにつながると考える。1年生でも「写真を撮る」「考えを共有する」といったことができる。授業にICTを活用したことで、子どもからは、「発表したいな」「絵本が読みたいな」「友だちの発表が上手だよ」「友だちに発表をほめてもらえてうれしい」といった感想があった。周りの教員の反応は「覚えるのが大変そう」「なくても困らない」「やってみたいけど、タブレットがないよね……」といった感じであったが、今後、校内研修の中に、ICT研修を入れようと考えている。
 これからさらに、教師自身のスキルアップと、スマートデザイナーの仲間との情報共有を行っていきたい。

発表資料(PDF:6.8MB)

発表3 「未来にいきる子どもたちに必要な情報活用能力を育てる」
大分県立日田高等学校 教諭 池 恩燮

池氏発表の様子 Super Science Programming(通称SSP)と呼ばれる授業で授業用クラウドを利用している。各生徒にIDが渡され、クラウド上に個人ごとのデータ保存領域が設けられている。このシステムを使用するために、生徒はかなりの知識と習熟が必要だったが、現在、多くの生徒が日常的にこのシステムを使い、課題の提出などを行っている。また「6分間ジッケング」とよばれる内容では、生徒が6分間で演示実験を行いながら英語でその内容についてICTを活用したプレゼンをする中で英語を用いた科学的な表現力の育成を行っている。生徒が自分のスマートフォンを使い、実験の結果を提示することもある。
 「探究Ⅰ」という授業では、生徒自身が興味のある課題をみつけ、問題解決や結果報告にICTを活用する。データ処理でのExcelの利用。インターネットによる情報収集。Power Pointでのスライド作成など。このような探究活動で情報機器を利用した生徒の情報活用能力と探究活動をしていない理系クラスで比較をしたところ、SSクラスの情報活用能力が優れている可能性が高いことが示された。
 現在、多くの現場で行われている一般的な業務や提示型のICTの利用により教員の情報活用能力が向上する。それを土台に教員が生徒活動型のICTの利用を考え、授業を展開することで、生徒の情報活用能力が向上する。さらにその結果、授業でのICT利用のハードルが教員、生徒がともに低下し、日常的に使う道具として認識されるようになる。この経験を持った生徒は、自分が大学や社会に出たときに情報や情報機器をどう利用すべきかを考えるようになり、子どもの情報活用能力が育つのではと感じる。

発表資料(PDF:142.3KB)

子どもたちの発表

発表1 「"Let's save the earth. What can you do?" ~臼杵の自然を守ろう」
臼杵市立東中学校 2年

臼杵市立東中学校の2年生は、英語の授業で環境問題について学んでいる。その中で、自分たちには何ができるかをみんなで考えて英語で発表した。

臼杵市立東中学校の発表

発表2 「言いたい!イマドキのネットのルール&マナー ~高校生のボクたちだから」
大分県立大分雄城台高等学校 3年

「高校生ICTカンファレンス」では県内の高校生が集まり、スマホやネットの利用について熟議する場で、平成25年から大分県でも実施している。平成27年の高校生ICTカンファレンスで大分県代表校に選ばれた大分県立大分雄城台高校の小畠さんは、全国サミットで各県の代表の生徒と更に熟議を深めた。今回は、その経験から得たものも含め、高校生だから言えるネットの利用について、発表した。

大分県立大分雄城台高等学校の発表

講演者への質問

 今回、質問の回収のために、OENシステム(※)を利用して、質問回収フォームを作った。また参加者がこのページにアクセスしやすいよう、QRコードをスマートフォンなどで読み取る設定を案内した。寄せられた質問には、各講師から回答していただいた。

QRコードを読み取ったスマートフォンの画面

図はQRコードを読み取ったスマートフォンの画面

回収した質問(一部抜粋)(PDF:160.8KB)

※OENシステムは、大分県教育委員会が大分県下の公立学校に導入を行っているメールやデータ共有、情報伝達等を行うシステムです。

おわりに

 教育情報化カンファレンスは5年目を迎え、リピーターも多く、参加者の情報教育に関する経験層が幅広くなってきた。そのため、すべての参加者のニーズに応えることは難しいが、未来を見据え、先進的な内容と現場ですぐに役立つ内容を合わせた構成で、今後も校種や立場を越えた様々な教育関係者が一堂に会する、情報活用能力の育成を考えるカンファレンスとして、意義あるものとしたい。

全体のアンケート集計結果(PDF:257.8KB)

参考

実施要項・プログラム
講師・発表者のプロフィール

お問い合わせ先

教育財務課 情報化推進班
TEL:097-506-5464
Email:zaimu@oen.ed.jp